近年、発達障害、グレーゾーンといった子どもが増えており、それに伴い、『療育』という言葉もよく耳にするようになってきました。
では、『療育』とはなんでしょうか?
どんなことをするのでしょうか?
今回は子どもの『療育とは何か?』ということをお伝えしていきます。
療育(発達支援)とは?
もともとは、東京大学名誉教授の高木憲次によって提唱された概念で、
- 「療」→医療あるいは治療を意味する
- 「育」→養育や保育もしくは教育を意味する
つまり、
「心身に障害をもつ児童に対して、社会人として自立できるように医療と教育をバランスを保ちながら並行してすすめる」
というのが療育と言われているそうです。
「療育」は児童福祉法でも言われている概念です。その法に基づき、療育に携わる施設が各自治体に設置されています。
(これについては詳しくは後述します。)
つまり、肢体不自由児や知的障害児、発達障害児様々な障害を持った子どもがいますが、どの子どもに対しても、障害の程度によらず、一人の人として自立して生きていけるように、医療と教育の双方の観点から子どもを支援していくというのが療育です。
ただ、現在は療育(発達支援)と言われると
発達障害と言われる子どもに対する支援をイメージする方が多いのではないでしょうか?
その子の特性に合わせて、園や学校での困り事を解決する方法を見つけるという、限定的な側面が注目されているように感じます。
もちろん、それも正解ですが療育という大きな概念から見ると一部分にすぎません。
療育において大切なことは、障害を持つ子どもが、将来自立した生活ができるようになるために、必要な支援を見つけるということです。
支援と言ってもその幅も非常に広いです。
例えば、子どもが苦手とするもの(音や触覚など)に近づけないようにさせるのも支援の1つでしょう。
一方で、苦手なものに慣れさせるために敢えて触れる機会をつくるのも1つでしょう。
どんな支援をするにも、支援者が考えるべきことは、
その支援がその子の将来の自立にとってふさわしいものかどうかということです。
また、誤解をしないよう注意していただきたいことは、
療育は障害のある子どもを“普通の子”に近づけることではなく、障害がある状態でどうしたら日常生活を送りやすくなるのかを子ども自身に学ばせることです。
療育者は、医者ではないので障害を治すことはできません。治すのではなく、その障害をどう活かすのかを考えます。
療育の効果
自立した生活ができるようになるために受けるのが療育ですが、具体的にどのような効果が得られるのかを考えていきます。
①日常生活に必要な能力を身につけられる
食事、排泄、更衣など、日常生活を送る上で必要となる行為ができるようになります。
肢体不自由がある子どもには、不自由な手足を使っていかにしてこれらの行為を行うのかの支援をします。
発達障害や知的障害の子どもには、これらの行為をいついかなる場面でも自立して行えるように支援をしていきます。
②社会性・コミュニケーション能力を身につけられる
小集団の中で社会性の基礎となる対人関係を学んだり、他者との関わりの中で感情・行動制御を学んでいきます。
そうすることで社会の中で適応行動がとり、コミュニケーションをきちんと取れるようになります。
➂自己肯定感が高まる
療育活動の中で、小さな成功体験を積み重ねていくことで、自己肯定感を高める効果もあります。
発達障害や知的障害を持つ子どもは、不器用で他の子どもと比べてできないことが多い傾向があります。
そのため療育で自己肯定感を高めていくことで自信を持っていけるよう支援をしていきます。
このような効果が療育では得ることができます。
子ども一人ひとりにとって、適切な療育、指導をして関わっていくことで、子どもは少しずつでもしっかりと成長していきます。
そして子どもが自立して社会で生きていけるようになるのです。
療育の内容
ここまで述べてきた療育の効果を生み出すために、実際に療育ではどんなことがされるのでしょうか?
まず、療育は『個別療育』と『集団療育』に分けられます。
個別の方が効果があるというわけではありません。
子どもの課題が、
個別の発達の問題(運動の不器用さ、手先の不器用さなど)なのか、
集団の中での問題(コミュニケーションの苦手さ、対人関係の苦手さなど)なのか、
どちらなのかによって『個別療育』をするべきか『集団療育』をするべきかが決まっていきます。
そこを見極めたうえで各プログラムが提供されていきます。
一部抜粋してご紹介します。
応用行動分析(ABA)
応用行動分析学というのは心理学の1つです。
これを療育に活用するのがABAと言われるものです。
ABAでは、『子どもの行動』だけではなく、行動の『きっかけ』と『結果』に注目することで、子どもの行動を良い方向に導いていく方法です。
簡単に言えば、「良いことをするように、適切なきっかけを与える」「良いことをしたときには、ご褒美があり、良くないことをしたときにはご褒美がない」ということです。
(非常に端的に説明しているので気になる方は詳しく調べてみてください。)
TEACCHプログラム
これは、アメリカで生まれた自閉症スペクトラム障害を対象としたプログラムです。
このプログラムは人生を通して行われるもので、「自閉症児の診断・評価」「構造化を特徴とした療育プログラム」「家族・支援者サポート」「就労支援」など様々なサービス群から成立しているそうです。
SST(ソーシャルスキルトレーニング)
これは子どもだけでなく大人にも適応されるプログラムです。
社会で人と人とが関わりながら生きていくために欠かせないスキルを身につける訓練のことを指します。
子どもは日常生活の中で、人に対して「やっていいこと」と「やっていけないこと」などの社会のルールを学んでいきます。
しかし、発達障害や知的障害をもつ子どもたちは、それを自然と学ぶことが難しい傾向があります。
そのためこれらを学べるように集団療育を受けたり、個別でワークシート課題に取り組んだりとその子どもに合った方法で学んでいきます。
音楽療法
音楽療法とは、音楽のもつ生理的・社会的・心理的はたらきを用いて、心身の障害の回復、機能の維持改善、生活の質の向上、行動の変容などに向けて、音楽を意図的・計画的に使用することと言われています。
音楽をきっかけに、心身の発達を促し、支援していくことができると言われています。
理学療法(PT)、 作業療法(OT)、言語聴覚療法(ST)
これらは病院のリハビリテーションとして提供されることが多いものです。
簡単に説明すると、
理学療法は身体全体の機能向上を、作業療法は日常生活動作の機能向上を、言語聴覚療法は口腔機能の向上を促す療法です。
発達障害や知的障害の子どものみならず、肢体不自由がある子どもたちにも広く適用されるものです。
ここまでにご紹介してきたもの以外にも、ペアレントトレーニングや認知行動療法、感覚統合療法など療育プログラムは様々存在します。
子どもに合ったプログラムを見つけていきましょう。
療育を受けるには
これらの療育を受けるには大きく2つの方法があります。
- 受給者証を取得して療育を受ける
- 自費で受けられる療育教室に参加する
ここでは1の方法について簡単に説明します。
①相談
乳幼児健診で発達障害の可能性を指摘されたり、
保護者の方自身が、心配になり発達支援センターや保健センターなどに相談をされることもあります。
その後専門の機関で検査をすることもあります。
そうして療育の必要性があると言われたら、療育施設の利用を検討していきます。
②利用施設の検討
入所施設、通所施設、訪問事業があります。
発達障害児の場合は通所施設の利用が多いと思います。
それらの施設にも多様な特色を持った施設があります。
対象にしている年齢や受けられるプログラムも様々です。
見学や体験もできる施設も多いので、子どもに合った施設を探しましょう。
③受給者証申請・交付
療育施設を利用するには、受給者証が必要になります。
各市区町村の自治体が交付する証明書です。
障害の診断や療育手帳を持っていなくても、療育の必要性があると認められれば、受給者証を取得できる市区町村が多いです。地域によっては診断書などの書類が必要になる可能性もあるので、事前に確認しておきましょう。
受給者証を取得することで、施設利用料は1割負担で済むようになります。(家庭の所得によって多少変動します。)
支給の有無やサービス内容の決定のための調査や審査が済むと、受給者証の交付を受けることができます。
④施設利用開始
受給者証の交付を受けたら、必要書類を作成し、利用したい施設との契約をすることで、利用をスタートできます。
ここまでは受給者証を利用する施設利用について説明しましたが、
受給者証が必要ない、民間で開催している療育プログラムを受けられる教室も多数存在しています。
そういった教室も含めて、子どもに合ったプログラムを受けられるように選択していきましょう。
療育を受けられる場所
先にも述べましたが、療育施設としては、入所施設、通所施設、訪問事業があります。
ここでは、発達障害児や知的障害児が多く利用する通所施設について説明します。
- 児童発達支援センター
- 児童発達支援事業所
- 放課後等デイサービス
児童発達支援センター
「児童発達支援を行うほか、施設の有する専門性を活かし、 地域の障害児やその家族への相談、障害児を預かる家族への援助・助言を合わせて行う地域の中核的な療育支援施設」と言われています。
また、地域における中核的な支援施設として、他の事業所と密接な連携を図るものとされています。
福祉サービスを行う「福祉型」と、福祉サービスに併せて治療を行う「医療型」があります。
医療型の施設では、医療的ケアを必要とする肢体不自由児や重症心身障害児も受け入れています。
児童発達支援事業所
発達障害などの0〜6歳の未就学児に対して、社会で自立できるように支援を行う通所施設です。
通所することで、療育支援を受けることができます。
放課後等デイサービス
小学校から高校まで(18歳まで)の通学中の子どもたちに対して、放課後や夏休み等の長期休暇中において、支援を行う通所施設です。
社会での自立を促進するとともに、放課後等の居場所づくりにもなっています。
入所施設と訪問事業についての詳細な説明は省略させていただきますが、簡単に説明すると、
- 入所施設は肢体不自由児や重症心身障害児の子どもが利用することが多いです。「医療型」と「福祉型」の2種類があります。
- 訪問事業には、保育所等訪問支援(通所施設の事業の一環でもあります)や在宅重症心身障害児等訪問事業があります。最近は発達障害児の自宅に訪問する「訪問療育」もあるそうです。
このように、子どもたちが必要な支援を受けられるように、通所施設や入所施設など、さまざまな施設が存在しています。
子どもの生活スタイルや、保護者の方の生活スタイルに合った施設を選択していくと良いでしょう。
療育に通うメリット・デメリット
ここからは、療育に通うメリットとデメリットについて考えていきます。
メリット
療育を受けることで得られる最大のメリットは、専門的な支援を受けられることです。
療育施設には、児童指導員や機能訓練士といった専門の知識を持つ指導員がいます。
子どもの特性を見極め、その子どもに必要な支援が何なのかを考え、実践してくれます。
また、保護者の方が、子どもとの接し方のヒントを得られるというメリットもあります。
家庭ではなかなかできないことでも、療育施設での支援によってできたという経験をきっかけに、子どもたちがより良い方向に変化していくと思います。
デメリット
早期療育をと保護者の方が必死になるがあまり、子どもを“普通の子”にしようとしてしまうことが懸念されます。
療育は、“普通の子”に治す場所ではありません。
その子の特性を持ちながら、社会で自立して生活していけるように支援する場所です。
そのため、子どもが“普通の子”になるように過剰な期待をして通わせることで、子どもにとってストレスがかかってしまうかもしれません。
また、“障害があるから”と決めつけてしまい、その子の将来の選択肢を減らしてしまう可能性もあります。
療育に通うことで、子どもの特性が浮き彫りになり、子どもを“障害児”と思い込んでしまうこともあります。
気にしすぎなければ、みんなと同じように普通級の小学校に通って、中学、高校と進学して、一般企業に就職できる可能性もあったかもしれないのに、
“障害児”だと思い込み、支援級、支援学校に通わせ、大人になったときには働き先として障害者雇用の枠しか選択できない状況にさせてしまうかもしれません。
いずれにしても、保護者の方の理解が必要になってきます。
子どもにとって最善の方法で、子どもの将来の自立に向けて支援していけるように、
保護者の方だけでなく、療育施設の職員や園や学校の先生など、たくさんの人たちで子どもを支援していけるといいですね。
Haporikiと一般的療育との違い
私が開催している教室 Haporikiでは、療育と運動教室の中間的な役割を担い、橋渡しをしています。
Haporikiの療育プログラムの最大の特徴は、『子ども指導エキスパート』の手法を使うことです。
子ども指導エキスパートとは、小集団の活動を通じて社会性につながる行動を学習させる指導者のことです。
指導者が子どもに合わせるのではなく、集団や場のルールに子どもが合わせることを方針としており、そうすることで社会性を育むことに力を入れているのが、最大の強みです。
ソーシャルスキルトレーニング(SST)とは異なる方法で、子どもの社会性を伸ばします。
この方法では、子どもの行動変容に着目しており、1時間の教室で必ず行動変容を起こすことができます。
一般的な療育とは異なり、過剰に盛り上げずとも子どもたちは意欲的に活動に取り組みます。
順番を“待ちたくなる”秘訣があります。
また、運動の土台となる運動遊びを通して、運動能力を高めること、集中力を高めること、自己肯定感を高めることもできます。
Haporikiの詳細はホームページをご覧ください!↓
よければ一度体験にいらっしゃってください。療育を必要とする子どもでも、そうでない子どもでも、どんなお子さんでも大歓迎です。